2023.
01.
18
古事記と日本書紀の記述が一致しない。
なんていうのは、困ったことにあるあるなのですが、ふと今回のタイトル通りのことを思ったのです。
実は私、オオナムチの出自については結構持て余していました。
古事記の記述によると、スサノオ×クシナダヒメで生まれた子は、ヤシマジヌミ一柱のみです。
そして、スサノオ×オオイチヒメの間に生まれた子はオオトシとウカノミタマです。
スサノオ様の神裔として語られるのはこの三柱だけなのです。
出雲国風土記で挙げられたスサノオ様の御子神と一柱も被っていないくらい、スサノオ様が子沢山だったであろうことは想像ですが、古事記が神裔三柱+大己貴の試練ストーリーで登場するスセリヒメ=四柱の神御子神に絞ったのは、その後の歴史に大きく絡んでくるのはこの四柱のみ、と言っているのだと思います。
※ スセリヒメは出雲国風土記にスサノオの御子として《和加須世理比売》の名があり、唯一古事記と一致する女神様です。
古事記の系図には、五十猛兄様とかその妹二柱も、スセリヒメも出てきません。
五十猛・大屋津比売・抓津比売が登場するのは、実は日本書紀の異文だけです。
ただし、五十猛と同一視されるオオヤビコは、古事記にも出て来ます。(イザナギ・イザナミ夫妻神がずら~っと沢山産んだ神の一柱&八十神から逃げてきたオオナムチを根の国に送り出す役で、この二柱が同一神かは意見が分かれる)
スセリヒメの扱いは微妙で、スサノオの神裔にはその名が無いのに、出雲を継ぐ末っ子姫(と推定される)として、所謂《オオナムチの試練》のエピソードになって突然登場するのです。
私の推測では、スサノオにしろ大国主にしろ大年にしろ、神裔の中で連ねてある御子神は全員母神が記載されているので、母神不明の扱いのスセリヒメは省かれたのだと思います。
母神不明と言えばの3兄妹も同様です。
逆に言えば、スセリヒメ・五十猛・大屋津比売・抓津比売の母神を隠したので神裔には入れられなかったし、入れない為に母神を明かさなかった、可能性もあります。
ただ、神裔に出て来なくても
オレの娘のスセリヒメを嫡妻にしてでっかい宮殿を建てて八十神ぶっkやっつけて大国主になりやがれコノヤロー!!(意訳)
とオオナムチに向ってツンデレな感じに叫んでいるので、スセリヒメ様はスサノオ様の娘に違いなのでしょう。
或いはリアルな感じに考えると、スセリヒメは《父スサノオの御魂を降ろすことが出来る巫女姫》であったのだと思います。
これは強烈なカリスマ姫です。
スサノオ様の活躍の記述を全消去した出雲風土記でさえ、その名だけは《神須佐能袁命》とかろうじて書き残した程度に、クニを作った(領土を広げた)のは所造天下大神(あめのしたつくらししおおかみ)でも、その祖神としてスサノオをリスペクトした証だと思います。
それで、何が困るかというと、古事記ではオオナムチはヤジマジヌミの後裔で、六世の孫なのにスサノオの娘と結婚したとかいう時系列無茶苦茶な設定になっているのに、日本書紀ではスサノオの妃はクシナダヒメが唯一とされ、そのまた唯一の子がオオナムチとされているからです。
この、世代をガン無視した古事記の記述と、逆にショートカットし過ぎのような日本書紀の記述の違いについては、今更私が言わなくても学者さんからアマチュアまで既に様々な考察と解釈が為されていますが、これが正解というものは無いようです。
何なら寿命が長すぎる神々の神話だから何でもアリ。で済ませてしまうことも出来てしまうのですし。
それでも、古事記と日本書紀をやや強引にくっつけると、よく言われるように
オオナムチ=ヤシマジヌミ
ということになります。六世の孫とか、こちらもガン無視するのが現実的だからです。
因みに、六世の孫としたのは、皇室には『皇位を継げるのは五世の孫まで』というルールが有るからで、六世の孫のオオナムチにはスサノオ様という一応天津神の出自(これ重要なんです。この理屈で、大和をの地をイワレヒコ軍に明け渡すまいと戦った長髄彦は殺される)の神の地位と土地を継承する権利はない、と位置づけたのでしょう。
古事記って概ね出雲贔屓のくせに、何考えてんのかわかんない。
日本書紀だと父スサノオ→息子オオナムチ、という一応跡継ぎの地位を与えているのですが、古事記の記述ではヤシマジヌミには継承権が危ういのです。
何故なら、古事記ではヤシマジヌミはオオトシ・ウカノミタマペアの兄、と明確に記されています。
出雲は末子相続で、オオトシとウカノミタマという弟と妹がいるのなら、長兄ヤシマジヌミは王にはなれないと言っているようなものです。
(つづく)
なんていうのは、困ったことにあるあるなのですが、ふと今回のタイトル通りのことを思ったのです。
実は私、オオナムチの出自については結構持て余していました。
古事記の記述によると、スサノオ×クシナダヒメで生まれた子は、ヤシマジヌミ一柱のみです。
そして、スサノオ×オオイチヒメの間に生まれた子はオオトシとウカノミタマです。
スサノオ様の神裔として語られるのはこの三柱だけなのです。
出雲国風土記で挙げられたスサノオ様の御子神と一柱も被っていないくらい、スサノオ様が子沢山だったであろうことは想像ですが、古事記が神裔三柱+大己貴の試練ストーリーで登場するスセリヒメ=四柱の神御子神に絞ったのは、その後の歴史に大きく絡んでくるのはこの四柱のみ、と言っているのだと思います。
※ スセリヒメは出雲国風土記にスサノオの御子として《和加須世理比売》の名があり、唯一古事記と一致する女神様です。
古事記の系図には、五十猛兄様とかその妹二柱も、スセリヒメも出てきません。
五十猛・大屋津比売・抓津比売が登場するのは、実は日本書紀の異文だけです。
ただし、五十猛と同一視されるオオヤビコは、古事記にも出て来ます。(イザナギ・イザナミ夫妻神がずら~っと沢山産んだ神の一柱&八十神から逃げてきたオオナムチを根の国に送り出す役で、この二柱が同一神かは意見が分かれる)
スセリヒメの扱いは微妙で、スサノオの神裔にはその名が無いのに、出雲を継ぐ末っ子姫(と推定される)として、所謂《オオナムチの試練》のエピソードになって突然登場するのです。
私の推測では、スサノオにしろ大国主にしろ大年にしろ、神裔の中で連ねてある御子神は全員母神が記載されているので、母神不明の扱いのスセリヒメは省かれたのだと思います。
母神不明と言えばの3兄妹も同様です。
逆に言えば、スセリヒメ・五十猛・大屋津比売・抓津比売の母神を隠したので神裔には入れられなかったし、入れない為に母神を明かさなかった、可能性もあります。
ただ、神裔に出て来なくても
オレの娘のスセリヒメを嫡妻にしてでっかい宮殿を建てて八十神
とオオナムチに向ってツンデレな感じに叫んでいるので、スセリヒメ様はスサノオ様の娘に違いなのでしょう。
或いはリアルな感じに考えると、スセリヒメは《父スサノオの御魂を降ろすことが出来る巫女姫》であったのだと思います。
これは強烈なカリスマ姫です。
スサノオ様の活躍の記述を全消去した出雲風土記でさえ、その名だけは《神須佐能袁命》とかろうじて書き残した程度に、クニを作った(領土を広げた)のは所造天下大神(あめのしたつくらししおおかみ)でも、その祖神としてスサノオをリスペクトした証だと思います。
それで、何が困るかというと、古事記ではオオナムチはヤジマジヌミの後裔で、六世の孫なのにスサノオの娘と結婚したとかいう時系列無茶苦茶な設定になっているのに、日本書紀ではスサノオの妃はクシナダヒメが唯一とされ、そのまた唯一の子がオオナムチとされているからです。
この、世代をガン無視した古事記の記述と、逆にショートカットし過ぎのような日本書紀の記述の違いについては、今更私が言わなくても学者さんからアマチュアまで既に様々な考察と解釈が為されていますが、これが正解というものは無いようです。
何なら寿命が長すぎる神々の神話だから何でもアリ。で済ませてしまうことも出来てしまうのですし。
それでも、古事記と日本書紀をやや強引にくっつけると、よく言われるように
オオナムチ=ヤシマジヌミ
ということになります。六世の孫とか、こちらもガン無視するのが現実的だからです。
因みに、六世の孫としたのは、皇室には『皇位を継げるのは五世の孫まで』というルールが有るからで、六世の孫のオオナムチにはスサノオ様という一応天津神の出自(これ重要なんです。この理屈で、大和をの地をイワレヒコ軍に明け渡すまいと戦った長髄彦は殺される)の神の地位と土地を継承する権利はない、と位置づけたのでしょう。
古事記って概ね出雲贔屓のくせに、何考えてんのかわかんない。
日本書紀だと父スサノオ→息子オオナムチ、という一応跡継ぎの地位を与えているのですが、古事記の記述ではヤシマジヌミには継承権が危ういのです。
何故なら、古事記ではヤシマジヌミはオオトシ・ウカノミタマペアの兄、と明確に記されています。
出雲は末子相続で、オオトシとウカノミタマという弟と妹がいるのなら、長兄ヤシマジヌミは王にはなれないと言っているようなものです。
(つづく)

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