2023.
01.
16
その、サクヤヒメと同じ異名を持つ姫。
一般的には《下照姫/シタテルヒメ》の名で知られている、オオクニヌシ×タキリヒメの娘で、同母の兄はアジスキタカヒコネ。
兄と同じ顔の男と結婚しちゃった不思議なお姫様です。(そして夫の喪屋を兄に吹っ飛ばされたという不憫)
そして、異名も不思議です。並べますと
下照比売、高比売命、下照姫命、高姫命、稚国玉、等
下にいるのか上に居るのかどっちだよ、と微妙にイラッとする名前です。
でも、旧事紀では母親がタゴリヒメ=タカツヒメ(高津姫)になっているので、母親が《高照姫》辺りの異名を持っていて、娘は下照を名乗っていたんだけど後に『高照』を継いだのかも知れません。
その母親というのが、記紀と旧事紀を合わせると、タキリヒメ=タゴリヒメ=神屋楯比売=スセリヒメ、という構図が成立するんですが、取り敢えず脇に置いておきましょう。
上記で『等』と付けた程度に、シタテルヒメには別の名が存在するのです。三輪氏族の系図に、
阿陀加夜怒志多伎吉比売命(あだかやぬしたききひめのみこと)という、すごい別名が。
阿陀(あだ)は《阿多》(あた)でしょう。濁点なんて誤差の範囲です。
わかりやすいようにわかりやすい漢字に置き換えます。
阿多 茅 主 多紀来姫命
クシナダヒメの両親が、実は《稲田宮主/いなだのみやぬし》という意外な大物ですが、シタテルヒメも相当です。
何たって、《主》ですよ《主》。
ほかに主って言ったら大国主とか大物主とか事代主でしょう。
シタテルヒメの異名のひとつに『稚国玉/わかのくにたま』であったのは伊達じゃなかった。この姫は多分スセリヒメの次の出雲女王だったのでしょう。
『たきき』は元の表記通り『多伎』という土地から来たという意味かも知れませんが、取り敢えず母神の『多紀理』から取ってみました。
そして、サクヤヒメは鹿葦津姫(かしつひめ)で鹿葦(かし)は地名とのことですが、本当にそれだけでしょうか?
シタテルヒメは『加夜怒志/かやぬし』ですが、『かや』は『茅』だと思います。
『かや』を名に持っている神は他にも居て、
鸕鶿草葺不合尊(うがやふきあえず)
>『日本書紀』によれば、鸕鶿草葺不合尊が誕生した産屋は全て鸕鶿(う)の羽を草(かや)としてふいたが、屋根の頂上部分をいまだふき合わせないうちに生まれ、草(かや)につつまれ波瀲(なぎさ)にすてられた。これにより、母親の豊玉姫が「彦波瀲武鸕鶿草葺不合(ひこなぎさたけうかやふきあえず)」と名付けたという。(wiki)
このエピソードのように、茅葺き屋根(かやぶきやね)の《茅/かや》だと思います。
《茅》の意味は《葦》を含みますが葦よりも広く、
>茅または萱(かや)とは、広辞苑(第5版)によれば、屋根を葺くのに用いる草本の総称で、チガヤ、スゲ(菅)、ススキ(薄、芒)などである。
もう少し専門的にいうと、茅(かや)とは、屋根葺き材料として使用されるイネ科植物の総称で、葦(アシ/ヨシ)、ススキ、カリヤス、シマガヤ、麦わら、稲わら等が含まれる。by茅葺き語彙・用語解説
詰まるところ、茅≧葦なんですね。
また、リンク先を読めばわかりますが、茅は霊力があると信じられたものであったようです。
古代の海人族の記憶でもきっとそうでしょう。舟を作るとしたら、草船か竹舟か丸木舟です。
丸木舟はかろうじて発掘されていますが、草船=葦船はそうも行きません。打ち捨てられていたらすぐに腐りますから残っていませんが、きっと古代日本~半島、大陸を行き来していた海人達は葦船に乗って海を渡っていたに違いありません。
ヒルコを葦船に乗せて流したのが古事記で、天磐櫲樟船(あめのいわくすぶね)という硬い櫲樟(ヨショウ=くすの木)で出来た船の神に乗せたのが日本書紀です。
ただでさえ子の数に入れないなんて酷いことをした上に、に葦の舟なんて頼りないものに入れて放棄するなんて!と古事記を容赦無く思ったことがあるのですが、単にリアリティの古事記、ミソロジーの日本書紀というだけだった模様です。
葦船は現在でも使っている国があって、画像検索してみると結構ゴツくて立派です。
木と同じくらい、葦は日常に必要なものであり、だからこそ大切で神聖なものだったのでしょう。
そこで、話を戻しますが、サクヤヒメは阿多の葦の姫で接頭語に『神/かむ』の尊称。
シタテルヒメは阿多の茅の姫で『主』が付く。
もっかい並べてみます。
神吾田鹿葦津姫(かむ あたかあしつひめ)――サクヤヒメ
阿陀加夜怒志多伎吉比売命(あだかやぬしたききひめのみこと)――シタテルヒメ
ほぼ同じでしょーよ!!
下照姫によくわからない『タキキ』が付いているだけで、どちらも阿多の女王の名前です。
(つづく)
一般的には《下照姫/シタテルヒメ》の名で知られている、オオクニヌシ×タキリヒメの娘で、同母の兄はアジスキタカヒコネ。
兄と同じ顔の男と結婚しちゃった不思議なお姫様です。(そして夫の喪屋を兄に吹っ飛ばされたという不憫)
そして、異名も不思議です。並べますと
下照比売、高比売命、下照姫命、高姫命、稚国玉、等
下にいるのか上に居るのかどっちだよ、と微妙にイラッとする名前です。
でも、旧事紀では母親がタゴリヒメ=タカツヒメ(高津姫)になっているので、母親が《高照姫》辺りの異名を持っていて、娘は下照を名乗っていたんだけど後に『高照』を継いだのかも知れません。
その母親というのが、記紀と旧事紀を合わせると、タキリヒメ=タゴリヒメ=神屋楯比売=スセリヒメ、という構図が成立するんですが、取り敢えず脇に置いておきましょう。
上記で『等』と付けた程度に、シタテルヒメには別の名が存在するのです。三輪氏族の系図に、
阿陀加夜怒志多伎吉比売命(あだかやぬしたききひめのみこと)という、すごい別名が。
阿陀(あだ)は《阿多》(あた)でしょう。濁点なんて誤差の範囲です。
わかりやすいようにわかりやすい漢字に置き換えます。
阿多 茅 主 多紀来姫命
クシナダヒメの両親が、実は《稲田宮主/いなだのみやぬし》という意外な大物ですが、シタテルヒメも相当です。
何たって、《主》ですよ《主》。
ほかに主って言ったら大国主とか大物主とか事代主でしょう。
シタテルヒメの異名のひとつに『稚国玉/わかのくにたま』であったのは伊達じゃなかった。この姫は多分スセリヒメの次の出雲女王だったのでしょう。
『たきき』は元の表記通り『多伎』という土地から来たという意味かも知れませんが、取り敢えず母神の『多紀理』から取ってみました。
そして、サクヤヒメは鹿葦津姫(かしつひめ)で鹿葦(かし)は地名とのことですが、本当にそれだけでしょうか?
シタテルヒメは『加夜怒志/かやぬし』ですが、『かや』は『茅』だと思います。
『かや』を名に持っている神は他にも居て、
鸕鶿草葺不合尊(うがやふきあえず)
>『日本書紀』によれば、鸕鶿草葺不合尊が誕生した産屋は全て鸕鶿(う)の羽を草(かや)としてふいたが、屋根の頂上部分をいまだふき合わせないうちに生まれ、草(かや)につつまれ波瀲(なぎさ)にすてられた。これにより、母親の豊玉姫が「彦波瀲武鸕鶿草葺不合(ひこなぎさたけうかやふきあえず)」と名付けたという。(wiki)
このエピソードのように、茅葺き屋根(かやぶきやね)の《茅/かや》だと思います。
《茅》の意味は《葦》を含みますが葦よりも広く、
>茅または萱(かや)とは、広辞苑(第5版)によれば、屋根を葺くのに用いる草本の総称で、チガヤ、スゲ(菅)、ススキ(薄、芒)などである。
もう少し専門的にいうと、茅(かや)とは、屋根葺き材料として使用されるイネ科植物の総称で、葦(アシ/ヨシ)、ススキ、カリヤス、シマガヤ、麦わら、稲わら等が含まれる。by茅葺き語彙・用語解説
詰まるところ、茅≧葦なんですね。
また、リンク先を読めばわかりますが、茅は霊力があると信じられたものであったようです。
古代の海人族の記憶でもきっとそうでしょう。舟を作るとしたら、草船か竹舟か丸木舟です。
丸木舟はかろうじて発掘されていますが、草船=葦船はそうも行きません。打ち捨てられていたらすぐに腐りますから残っていませんが、きっと古代日本~半島、大陸を行き来していた海人達は葦船に乗って海を渡っていたに違いありません。
ヒルコを葦船に乗せて流したのが古事記で、天磐櫲樟船(あめのいわくすぶね)という硬い櫲樟(ヨショウ=くすの木)で出来た船の神に乗せたのが日本書紀です。
ただでさえ子の数に入れないなんて酷いことをした上に、に葦の舟なんて頼りないものに入れて放棄するなんて!と古事記を容赦無く思ったことがあるのですが、単にリアリティの古事記、ミソロジーの日本書紀というだけだった模様です。
葦船は現在でも使っている国があって、画像検索してみると結構ゴツくて立派です。
木と同じくらい、葦は日常に必要なものであり、だからこそ大切で神聖なものだったのでしょう。
そこで、話を戻しますが、サクヤヒメは阿多の葦の姫で接頭語に『神/かむ』の尊称。
シタテルヒメは阿多の茅の姫で『主』が付く。
もっかい並べてみます。
神吾田鹿葦津姫(かむ あたかあしつひめ)――サクヤヒメ
阿陀加夜怒志多伎吉比売命(あだかやぬしたききひめのみこと)――シタテルヒメ
ほぼ同じでしょーよ!!
下照姫によくわからない『タキキ』が付いているだけで、どちらも阿多の女王の名前です。
(つづく)

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