2023.
01.
14
古語で海をワタと言ったんだよ、っていうのは正しいと思うのですが、『わた』と『うみ』はどう読んでも聞いても近くない。
『わた』と『うみ』の語源は別経路から入って来たように感じます。
そして、世間一般では意外にも『うみ』の由来が謎で、『わた』が何であるかの方がよく知られているようです。
私がごちゃごちゃ言うよりも、こちらの日本語の起源について(58)を読んでくれた方が早いです。
※ 『うみ』の語源は先程紹介した日本語の意外な歴史をお読み下さい。
どうして《百済国から渡来した》と限定されるのか、私はそう結論づけるソースになった原文を読んでいないのでわかりませんが。
というのは、海人族にとっては渡来も何も無いのですよね。海は公共交通機関のようなものであって、文化は常に行き交っているものだったはずだからです。
そして海辺に便利な所があれば、陸の民よりもずっと簡単に拠点を変えることが出来たでしょう。
海は繋がりであって、山がちな陸地は道を作るのも移動するのも大変で、《隔てるもの》は海ではなくて陸の方です。
『わた』のルーツが『原野』とのことですが、この言葉が生まれた場所には広々として見晴らしの良い原野があったのでしょう。
それが同じイメージを抱かせる『海』と重なり、日本に伝わり『海/わた』となった。(朝鮮では『パダ』『パタ』で定着)
その概念も『海原/うなばら』として残っています。
そして、『うみ』と『わた』というふたつの言葉が出会い「ワタ+ツ+ウミ」(ワタというウミ)→"u"がひとつ抜けて『わたつみ』になった。
…という成り行きを考えると、多分、『ヤマツミ』よりも『ワタツミ』の方が新しいのではと思います。
だから、古い『やまつみ』を上書きするように『わたつみ』が海の神の名として残った。
一方『ヤマ』は『山/ヤマ』と『海/ウミ』に分化し区別されるようになり、故に『やまつみ』は山の神限定になってしまったのでしょう。
そして、海としての『わた』は遥か昔の古語として埋没してしまいましたが、『畑/はた』やその類義語として陸の方に残りました。
色々混同がありましたが、『やまつみ』も『わたつみ』もどちらも元々は女神だった考えます。
日本神話は後世の男系優先の価値観に添って変化してしまい、『大/おお』が付く偉そうな神は大抵男神になり、例外は天照大御神や大日孁くらいになってしまったのだと思います。
そして、海人の国出雲では、『女神オオヤマツミ』の娘であったり孫であったりする伝承のある一族の女性が巫女王となるしきたりだったのでしょう。
今まで話を追ってきたように、ニニギ尊もコノハナサクヤヒメという『オオヤマツミの娘』を娶っています。
コノハナサクヤヒメに関しては、《父は天神》という箔を付けています。
※ だからオオヤマツミに釣り合うほどの《天神》って誰さ?やっぱり私はスサノオ様しか思い付かない
山幸彦ヒコホデミミも豊玉姫という『ワタツミの娘』を娶っていますが、こちらも《海の女神の娘》という共通項があるのでヤマツミと同族かと思います。
豊玉姫と玉依姫姉妹を自身の宮殿に住まわせていたのなら、ワタツミも母であり、女神の可能性が高いのです。
それだけ、海の女神は偉大であり、海の女神のモデルとなった実在の人物がいたならば、相当な権力者か、何らかの《正当性》をアピール出来る女系の血筋の元になった女性です。
その女性(女神のモデルor伝承上の祖霊である女神)って、誰でしょう?
大日孁が別の名(私の脳内では栲幡千千姫)を持っていたように、オオヤマツミにも違う名前があるのでしょうか。
まだわかりませんが、魅力的なテーマなのでいつか考察出来たらと思います。
長い連載になりましたが、タイトルの《古代の巫女王と政治王の跡継ぎはどう決める?》の答えは、古代の出雲とヤマトに限って言えば、
巫女王:オオヤマツミに連なる女系の姫
政治王:巫女王の親族(男系も含む)など同じクニの有力者である男性
となります。
政治王が巫女王とは違うクニの男であるならば、事実上政治権が奪われて、それはクニを乗っ取られた(穏便な場合は同盟や統合)ということだと思います。
つまり、出雲+旧ヤマト勢力VS高天原勢力 の争いと戦いは、女神オオヤマツミの血筋の姫と、彼女たちに付随する王の正当性の争奪戦であり、
壮大なお家騒動。
だったのではないでしょうか。
『わた』と『うみ』の語源は別経路から入って来たように感じます。
そして、世間一般では意外にも『うみ』の由来が謎で、『わた』が何であるかの方がよく知られているようです。
私がごちゃごちゃ言うよりも、こちらの日本語の起源について(58)を読んでくれた方が早いです。
※ 『うみ』の語源は先程紹介した日本語の意外な歴史をお読み下さい。
どうして《百済国から渡来した》と限定されるのか、私はそう結論づけるソースになった原文を読んでいないのでわかりませんが。
というのは、海人族にとっては渡来も何も無いのですよね。海は公共交通機関のようなものであって、文化は常に行き交っているものだったはずだからです。
そして海辺に便利な所があれば、陸の民よりもずっと簡単に拠点を変えることが出来たでしょう。
海は繋がりであって、山がちな陸地は道を作るのも移動するのも大変で、《隔てるもの》は海ではなくて陸の方です。
『わた』のルーツが『原野』とのことですが、この言葉が生まれた場所には広々として見晴らしの良い原野があったのでしょう。
それが同じイメージを抱かせる『海』と重なり、日本に伝わり『海/わた』となった。(朝鮮では『パダ』『パタ』で定着)
その概念も『海原/うなばら』として残っています。
そして、『うみ』と『わた』というふたつの言葉が出会い「ワタ+ツ+ウミ」(ワタというウミ)→"u"がひとつ抜けて『わたつみ』になった。
…という成り行きを考えると、多分、『ヤマツミ』よりも『ワタツミ』の方が新しいのではと思います。
だから、古い『やまつみ』を上書きするように『わたつみ』が海の神の名として残った。
一方『ヤマ』は『山/ヤマ』と『海/ウミ』に分化し区別されるようになり、故に『やまつみ』は山の神限定になってしまったのでしょう。
そして、海としての『わた』は遥か昔の古語として埋没してしまいましたが、『畑/はた』やその類義語として陸の方に残りました。
色々混同がありましたが、『やまつみ』も『わたつみ』もどちらも元々は女神だった考えます。
日本神話は後世の男系優先の価値観に添って変化してしまい、『大/おお』が付く偉そうな神は大抵男神になり、例外は天照大御神や大日孁くらいになってしまったのだと思います。
そして、海人の国出雲では、『女神オオヤマツミ』の娘であったり孫であったりする伝承のある一族の女性が巫女王となるしきたりだったのでしょう。
今まで話を追ってきたように、ニニギ尊もコノハナサクヤヒメという『オオヤマツミの娘』を娶っています。
コノハナサクヤヒメに関しては、《父は天神》という箔を付けています。
※ だからオオヤマツミに釣り合うほどの《天神》って誰さ?やっぱり私はスサノオ様しか思い付かない
山幸彦ヒコホデミミも豊玉姫という『ワタツミの娘』を娶っていますが、こちらも《海の女神の娘》という共通項があるのでヤマツミと同族かと思います。
豊玉姫と玉依姫姉妹を自身の宮殿に住まわせていたのなら、ワタツミも母であり、女神の可能性が高いのです。
それだけ、海の女神は偉大であり、海の女神のモデルとなった実在の人物がいたならば、相当な権力者か、何らかの《正当性》をアピール出来る女系の血筋の元になった女性です。
その女性(女神のモデルor伝承上の祖霊である女神)って、誰でしょう?
大日孁が別の名(私の脳内では栲幡千千姫)を持っていたように、オオヤマツミにも違う名前があるのでしょうか。
まだわかりませんが、魅力的なテーマなのでいつか考察出来たらと思います。
長い連載になりましたが、タイトルの《古代の巫女王と政治王の跡継ぎはどう決める?》の答えは、古代の出雲とヤマトに限って言えば、
巫女王:オオヤマツミに連なる女系の姫
政治王:巫女王の親族(男系も含む)など同じクニの有力者である男性
となります。
政治王が巫女王とは違うクニの男であるならば、事実上政治権が奪われて、それはクニを乗っ取られた(穏便な場合は同盟や統合)ということだと思います。
つまり、出雲+旧ヤマト勢力VS高天原勢力 の争いと戦いは、女神オオヤマツミの血筋の姫と、彼女たちに付随する王の正当性の争奪戦であり、
壮大なお家騒動。
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