2022.
12.
05
日本書紀に登場する謎の神・火酢芹(ホスセリ)。古事記では火須勢理と表記されます。
――――と、安易に同一神とは言えない、という見解があるようです。
というのは、古事記ではスッキリと第一子火照命(ホデリ=海幸彦)、第二子が火須勢理命(ホスセリ)、第三子が火遠理命(ホオリ=山幸彦)と言い切っているのに対し、日本書紀の方は本文の他に「一書曰く」から始まる異文が何パターンもあって、火酢芹(ホスセリ日本書紀表記)が産まれた順番が違うからです。
日本書紀本文。ニニギ尊が神吾田津姫と、接頭語に「神」が付く、神威の甚だしい美人と出会います。
※ カムアタツヒメは木花咲耶姫、鹿葦津姫(カシツヒメ)とも言います。
その時の日本書紀の記述というのが、
『皇孫問此美人曰「汝誰之女子耶。」對曰「妾是、天神娶大山祇神、所生兒也。』
訳:皇孫(ニニギ)はこの美人に問われていった。「あなたは誰の娘であろうか?」対して(美人が)言うには「私は、天津神が大山祇神(オオヤマツミ)を娶って産まれた子です。」
……はい?
オオヤマツミって女神だったのか!?
ニニギとサクヤヒメのバナナ神話は、ヤマタノオロチ神話と同じく、その部分だけ切り取られて子供でも読める物語として世に出回っていたようで、私はこのエピソードは結構昔から知っていた気がする、のですが。
3年もこのブログやっててなんで今まで気が付かなかったのであろうか……(衝撃のあまりしばし茫然)
だってー、オオヤマツミはスサノオである説なんていうのも読んだことがあるし、オオヤマツミってあちこちの勢力に子をばら撒いているし、てっきり子沢山すぎる男神だと思ってたんだよーーー!!
でも問題はそこじゃなくて、日本書紀に何故かいくつも異文がある、不義の子疑惑にブチ切れサクヤ様の火中出産の末に生まれてきた子供達の順番や名前が違う、ということです。
日本書紀は本文の他に「一書曰」から始まる異文があって、異文であるからして、本文という本命のほかに「こういう違う言い伝えがあるんですが」という漢字で書き残されています。
※ そんなこんなで、三貴子(アマテラス・ツクヨミ・スサノオ)の誕生パターンは実は色々あるんです。一般に知られているのは古事記のストーリーです。
そこで、サクヤ様が出産した皇孫の御子神は
【本文】
燃え上がった煙から生まれ出た子を、火闌降命(ほのすそりのみこと/長男)と名づけた。これが隼人(はやと)らの始祖である。
次に熱を避けてお出でになるときに生まれ出た子を、彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと/次男)と名づけた。
次に生まれ出た子を、火明命(ほのあかりのみこと/末子)と名づけた。これが尾張連おわりむらじの始祖である
日本書紀は尊称で身分がわかります。尊>命 なので、三柱のうち勝ち組(皇統)は次男・ヒコホホデミ尊と決まっていて、「~命」は皇孫の子であろうと雑魚決定です。
ですから次のステージの海幸彦VS山幸彦なんて、山幸彦(ヒコホホデミ尊)が勝つと決まっている出来レースな訳です。
そして、これも今まで私が気付かなかったのが迂闊です。
日本書紀本文で、ヒコホホデミ尊(山幸彦)が三兄弟の真ん中だとは!!
この辺りで私は、あ、この本文怪しいな~、と思う訳です。
(つづく)
――――と、安易に同一神とは言えない、という見解があるようです。
というのは、古事記ではスッキリと第一子火照命(ホデリ=海幸彦)、第二子が火須勢理命(ホスセリ)、第三子が火遠理命(ホオリ=山幸彦)と言い切っているのに対し、日本書紀の方は本文の他に「一書曰く」から始まる異文が何パターンもあって、火酢芹(ホスセリ日本書紀表記)が産まれた順番が違うからです。
日本書紀本文。ニニギ尊が神吾田津姫と、接頭語に「神」が付く、神威の甚だしい美人と出会います。
※ カムアタツヒメは木花咲耶姫、鹿葦津姫(カシツヒメ)とも言います。
その時の日本書紀の記述というのが、
『皇孫問此美人曰「汝誰之女子耶。」對曰「妾是、天神娶大山祇神、所生兒也。』
訳:皇孫(ニニギ)はこの美人に問われていった。「あなたは誰の娘であろうか?」対して(美人が)言うには「私は、天津神が大山祇神(オオヤマツミ)を娶って産まれた子です。」
……はい?
オオヤマツミって女神だったのか!?
ニニギとサクヤヒメのバナナ神話は、ヤマタノオロチ神話と同じく、その部分だけ切り取られて子供でも読める物語として世に出回っていたようで、私はこのエピソードは結構昔から知っていた気がする、のですが。
3年もこのブログやっててなんで今まで気が付かなかったのであろうか……(衝撃のあまりしばし茫然)
だってー、オオヤマツミはスサノオである説なんていうのも読んだことがあるし、オオヤマツミってあちこちの勢力に子をばら撒いているし、てっきり子沢山すぎる男神だと思ってたんだよーーー!!
でも問題はそこじゃなくて、日本書紀に何故かいくつも異文がある、不義の子疑惑にブチ切れサクヤ様の火中出産の末に生まれてきた子供達の順番や名前が違う、ということです。
日本書紀は本文の他に「一書曰」から始まる異文があって、異文であるからして、本文という本命のほかに「こういう違う言い伝えがあるんですが」という漢字で書き残されています。
※ そんなこんなで、三貴子(アマテラス・ツクヨミ・スサノオ)の誕生パターンは実は色々あるんです。一般に知られているのは古事記のストーリーです。
そこで、サクヤ様が出産した皇孫の御子神は
【本文】
燃え上がった煙から生まれ出た子を、火闌降命(ほのすそりのみこと/長男)と名づけた。これが隼人(はやと)らの始祖である。
次に熱を避けてお出でになるときに生まれ出た子を、彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと/次男)と名づけた。
次に生まれ出た子を、火明命(ほのあかりのみこと/末子)と名づけた。これが尾張連おわりむらじの始祖である
日本書紀は尊称で身分がわかります。尊>命 なので、三柱のうち勝ち組(皇統)は次男・ヒコホホデミ尊と決まっていて、「~命」は皇孫の子であろうと雑魚決定です。
ですから次のステージの海幸彦VS山幸彦なんて、山幸彦(ヒコホホデミ尊)が勝つと決まっている出来レースな訳です。
そして、これも今まで私が気付かなかったのが迂闊です。
日本書紀本文で、ヒコホホデミ尊(山幸彦)が三兄弟の真ん中だとは!!
この辺りで私は、あ、この本文怪しいな~、と思う訳です。
(つづく)

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