2020.
11.
12
帯によると、『歴史浪漫文学賞研究部門優秀賞受賞作品』だそうで、在野の方が書いた本です。
田中氏の経歴を見ると、早稲田大学卒業後、横浜市勤務。
公務員の仕事の一環なのか、横浜市港区新田地区の郷土史『新田むかしむかし』を発行したり、古文書と関わったり、小学生に縄文土器の作り方を教えたり、地道な現場主義だな、という気がします。
私、一応絵描きなので、自分がろくに絵筆を握ったことも無い癖に、古い日本画を見てこの描線が@@と似ている似ていない、と論じたり、仏像を美術品として論ずるばかりで手を合わせることもしない、仏師がどんな信心でどんな祈りで鑿(のみ)と槌を日夜握っていたのか想いを馳せることもしない、そういう学者達に心底嫌気が差していた(美術史を専攻した私が間違っていた…でも私は美大に行くような技術も金も無かったんだよ…)ので、縄文土器を実際に作ってみるなんて、すごくナイスな企画だと思うんですよね。
本当に、弥生土器は縄文土器より優れているのか?
確かに弥生土器は高温で焼かれて薄地でも硬く軽いんだろうけど、縄文土器のとんでもない芸術性は、まじとんでもないです。
私は絵は描けるけど立体(彫刻その他)は全くダメだと思い知っているので、縄文土器の装飾性が『とにかく凄い』ことだけは保証できます。
さて、この本の帯には続いて『神門の水海で勢力を拡大した須佐之男系の海神集団は(以下略)』とありまして、スサノオ様は海神であり海人である!と主張してきた私が飛び付くのには十分でした。
ページを開けば、はじめに、とあって、──虐げられた神── とありました。
著者は、須佐之男という神について、『著名な割には悲惨な扱いをされる神』、『私はこの神が、昔から哀れに思えてならなかった』と綴っています。
『敵役を演ずるために生み出された神のようでもある』とも。
また、須佐之男のほかにも一柱、同情を禁じ得ない神が思い浮かぶ、と須佐之男の母イザナミを上げています。
(以下引用)
>この神が死んでのち、黄泉の国に迎えに来たイザナギは、勝手に約束を破って逃げ出したにも関わらず、穢らわしいものを見たと言って、慌てて禊ぎする。
>まるでイザナミの記憶を全て洗い捨てているかのようだ。
(引用終了。太字は私)
しかし、この須佐之男とイザナミという二中の相関が、出雲神話の重要な要素になっている、と著者は言います。
確かに、淡路の女神・イザナミが、何故出雲に数多く祀られているのか、私にも理解不明でした。
イザナミが海人族の神であるならば、出雲に辿り付くのはそんなに難しいことではないとは言え、イザナギの不在感が気に掛かります。
これ以上は、この本を実際に読んでみることをお勧めします。
スサノオ様が海人族である、という視点で書かれた本は少ないように思うので、貴重な本だと思います。
ネックは、著者がスサノオ様を何かと新羅と結びつけたがり、渡来人(と倭人のハーフ?)だという前提で話を進めているところでしょうか。
※ 私は何でも渡来人説は違うと思っているので
※ 日本は山がちの島国です。縄文時代から近海~遠洋まで渡る海運に優れ、陸路の確保が難しい土地でも川を遡って進出していたと考えるのが妥当だと思います
一応目次は確かめたのですが、一行だけ『海人伝承と渡来神』とあるのを、1行だけだったのでさほど重視せずに買ったら、案外著者は重要視していた、という顛末であります。
ただ、著者は遺跡や発掘品に対してとても詳しい上に、机上の空論にせず現地に足を運んで、『その土地に住んだ人々』に想いを馳せています。
尤も、現地に足を運んでも、発想にオリジナル要素が強いので、私は少々付いていけない感がありました。
著者は古事記を重んじていますが、私は案外日本書紀の著者は《時の権力に逆らって》暗号のように本音を残している、という印象を持っているので、その辺りの温度差もあるでしょう。
でも、amazonのレビューでは概ね好評で、新鮮な思いと共に、納得した、腑に落ちたという人が多い模様ですので、スサノオという神、そしてスサノオという《人物》に心惹かれる方は、一度読んでみては如何かと、お勧めしたいと思います。
因みに、私はamazonでは中古品出品でも売り切れだったので、楽天市場で検索して入手しました。
※ 楽天ブックスではないです。他にも本を扱っているお店はありますから、楽天市場のトップページから検索してみると、まだ残っているかもしれません。
田中氏の経歴を見ると、早稲田大学卒業後、横浜市勤務。
公務員の仕事の一環なのか、横浜市港区新田地区の郷土史『新田むかしむかし』を発行したり、古文書と関わったり、小学生に縄文土器の作り方を教えたり、地道な現場主義だな、という気がします。
私、一応絵描きなので、自分がろくに絵筆を握ったことも無い癖に、古い日本画を見てこの描線が@@と似ている似ていない、と論じたり、仏像を美術品として論ずるばかりで手を合わせることもしない、仏師がどんな信心でどんな祈りで鑿(のみ)と槌を日夜握っていたのか想いを馳せることもしない、そういう学者達に心底嫌気が差していた(美術史を専攻した私が間違っていた…でも私は美大に行くような技術も金も無かったんだよ…)ので、縄文土器を実際に作ってみるなんて、すごくナイスな企画だと思うんですよね。
本当に、弥生土器は縄文土器より優れているのか?
確かに弥生土器は高温で焼かれて薄地でも硬く軽いんだろうけど、縄文土器のとんでもない芸術性は、まじとんでもないです。
私は絵は描けるけど立体(彫刻その他)は全くダメだと思い知っているので、縄文土器の装飾性が『とにかく凄い』ことだけは保証できます。
さて、この本の帯には続いて『神門の水海で勢力を拡大した須佐之男系の海神集団は(以下略)』とありまして、スサノオ様は海神であり海人である!と主張してきた私が飛び付くのには十分でした。
ページを開けば、はじめに、とあって、──虐げられた神── とありました。
著者は、須佐之男という神について、『著名な割には悲惨な扱いをされる神』、『私はこの神が、昔から哀れに思えてならなかった』と綴っています。
『敵役を演ずるために生み出された神のようでもある』とも。
また、須佐之男のほかにも一柱、同情を禁じ得ない神が思い浮かぶ、と須佐之男の母イザナミを上げています。
(以下引用)
>この神が死んでのち、黄泉の国に迎えに来たイザナギは、勝手に約束を破って逃げ出したにも関わらず、穢らわしいものを見たと言って、慌てて禊ぎする。
>まるでイザナミの記憶を全て洗い捨てているかのようだ。
(引用終了。太字は私)
しかし、この須佐之男とイザナミという二中の相関が、出雲神話の重要な要素になっている、と著者は言います。
確かに、淡路の女神・イザナミが、何故出雲に数多く祀られているのか、私にも理解不明でした。
イザナミが海人族の神であるならば、出雲に辿り付くのはそんなに難しいことではないとは言え、イザナギの不在感が気に掛かります。
これ以上は、この本を実際に読んでみることをお勧めします。
スサノオ様が海人族である、という視点で書かれた本は少ないように思うので、貴重な本だと思います。
ネックは、著者がスサノオ様を何かと新羅と結びつけたがり、渡来人(と倭人のハーフ?)だという前提で話を進めているところでしょうか。
※ 私は何でも渡来人説は違うと思っているので
※ 日本は山がちの島国です。縄文時代から近海~遠洋まで渡る海運に優れ、陸路の確保が難しい土地でも川を遡って進出していたと考えるのが妥当だと思います
一応目次は確かめたのですが、一行だけ『海人伝承と渡来神』とあるのを、1行だけだったのでさほど重視せずに買ったら、案外著者は重要視していた、という顛末であります。
ただ、著者は遺跡や発掘品に対してとても詳しい上に、机上の空論にせず現地に足を運んで、『その土地に住んだ人々』に想いを馳せています。
尤も、現地に足を運んでも、発想にオリジナル要素が強いので、私は少々付いていけない感がありました。
著者は古事記を重んじていますが、私は案外日本書紀の著者は《時の権力に逆らって》暗号のように本音を残している、という印象を持っているので、その辺りの温度差もあるでしょう。
でも、amazonのレビューでは概ね好評で、新鮮な思いと共に、納得した、腑に落ちたという人が多い模様ですので、スサノオという神、そしてスサノオという《人物》に心惹かれる方は、一度読んでみては如何かと、お勧めしたいと思います。
因みに、私はamazonでは中古品出品でも売り切れだったので、楽天市場で検索して入手しました。
※ 楽天ブックスではないです。他にも本を扱っているお店はありますから、楽天市場のトップページから検索してみると、まだ残っているかもしれません。

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オオロに住むオオロです!
こんにちは。興味深く読ませていただきました。
私の村は、この本に登場する虫井神社にあります。80年~100年くらい前までは現在の集落から山道1.5キロほど上がった成畑という場所に10軒程度あったそうです。(近くに隠谷城跡あり)子どものころは歩いて墓掃除や墓参りに行っていました。墓は2m×5mくらいで、戒名がある墓石は少なく団子石を重ねたような墓がたくさんあった記憶があります。
中学生くらいに寄せ墓を行い、今は埋まってしまって場所さえ分からなくなりました。
八頭郡誌には平将門の家来で大呂将監たちが住みつき農業を始めたとか木地師が住みついたとかいろいろな説があります。
実際はどうなのでしょうか?
私の先祖過去帳も明治10年に菩提寺が大火で焼失して分からなくなっています。
神社にあるのかな?とか思いましたが、若い神主で『どうなんでしょうねえ?』くらいの回答です。
謎めいた先祖のルーツが分かればいいのですが、、、、
明治時代の先祖から私まで7代目まではわかるのですが、その昔が分かればと思うばかりです。
貴重な参考になりそうな資料本ありがとうございましたと田中先生へお伝えください。
私の村は、この本に登場する虫井神社にあります。80年~100年くらい前までは現在の集落から山道1.5キロほど上がった成畑という場所に10軒程度あったそうです。(近くに隠谷城跡あり)子どものころは歩いて墓掃除や墓参りに行っていました。墓は2m×5mくらいで、戒名がある墓石は少なく団子石を重ねたような墓がたくさんあった記憶があります。
中学生くらいに寄せ墓を行い、今は埋まってしまって場所さえ分からなくなりました。
八頭郡誌には平将門の家来で大呂将監たちが住みつき農業を始めたとか木地師が住みついたとかいろいろな説があります。
実際はどうなのでしょうか?
私の先祖過去帳も明治10年に菩提寺が大火で焼失して分からなくなっています。
神社にあるのかな?とか思いましたが、若い神主で『どうなんでしょうねえ?』くらいの回答です。
謎めいた先祖のルーツが分かればいいのですが、、、、
明治時代の先祖から私まで7代目まではわかるのですが、その昔が分かればと思うばかりです。
貴重な参考になりそうな資料本ありがとうございましたと田中先生へお伝えください。
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