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2020. 06. 27  
出雲ファン必読の書です。

と、始めから大文字で主張してみました。
控え目に言って名著なのに、絶版であるらしく、中古でしか手に入らないのが残念です。

発行は2001/12/25で19年も前の本ですので、所々情報の時代遅れ感はありますが、この本の本質である『言語学的な古代史へのアプローチ』という手段は、普遍的に通用するものだと思います。

例えば、農民の文化圏では農業に関する語彙が豊富で、海人の文化圏では漁労や航海に関する語彙が豊富です。

解りやすく言えば、魚を多く食す歴史を持つ日本人が魚の種類や部位について多くの語彙を持っているのに対し、欧米圏の魚をあまり食べない国では、マグロとカツオも区別無く『ツナ』(orそれに近い単語という)という、日本人にとっては有り得ない大雑把。

逆に、日本では、牛のオスメスを区別するには、『牡牛』、『雌牛』と性別を頭にくっつけるだけですが、英語は『Bull』、『cow』と、全然別の動物のように名前が違います。
※ 正確には、『cow』は牛全体もしくは雌牛を差していますが、牡牛という意味は無い

どんな生活をしているか、そしてしてきたかという民族や土地の歴史は、語彙の多さと少なさで判るのです。

時代を経て、日本列島でも生活パターンが均一化される方向に向かい、その豊かな語彙は消えてゆきました。
でも、かろうじて、主にお年を召した方の語彙に、その古語が方言として残されているのです。

本書は言語学者である著者が、昭和30年代後半から30年余にかけて、日本各地の《生活語彙》を採取し続けた結果、日本海側、特に出雲地方に豊富に残されていた語彙から、かつてここに海人達の大きな拠点があった、という考察をしています。
著者が、タイトルに

出雲王権 と海人文化

という副題を付けているほどに、貿易で富を為した海人達の勢力は大きなものであったのだと。

私も、スサノオ様は海の民の出自だ、朝鮮半島から《来た》のではなく、《戻ってくる》倭人であり、そのような海人の貿易は縄文時代に遡ると主張してきましたが、本書を読んで、これほど大きな勢力だとは思わなかったと驚き、また言語学という生きた人間から読み解く歴史という新鮮な切り口は、大変に興味深く共感出来ると思いました。

嗚呼、本当に、復刊して出雲ファンや古代史ファンに読んで欲しい!と切に思います。(数少ないながらも中古&高値で流通していますが)
紙本は売上が読めなくて採算が取れないというのなら、Kindle でもいい!とにかくカモン!!と願っております。
2020. 06. 14  
この本の凄まじいほどの貴重さは、もう表紙でも帯でも、見た瞬間に判るのではないでしょうか。

何しろ、明治生まれの第八十二代出雲国造、つまり出雲大社の宮司であった千家家のかつてのトップが!
出雲大社と出雲神話、出雲の古代について語った本、なのです!!

出雲ファン、神話ファン、神話は古代史を反映している派クラスタ、神社ヲタ(褒め言葉)、のどれかに当てはまるのなら、絶対に読む価値があります。

※ 私は左から3つは当てはまります
※ 残念ながら、私は神社ヲタを名乗るには、勉強不足すぎると思います精進します

推論で自説を展開する歴史家の本や、スピリチュアル系の神話本を読む前に、出雲大社だけではなく、古代出雲を知りたい人の1冊目にお勧めしたい本です。

…という、素晴らしい資料であることを全面に押し出しつつ、以下の点にだけは苦笑しました。

1.アメノホヒ(出雲国造の祖神)が、天孫降臨の為の使者として出向いたのに、オオクニヌシに心酔して高天原に戻らなかった=つまり天孫サイドを裏切って任務を遂行しなかった、という記紀神話を全面否定して、そんなはずはない!出雲国造神賀詞どおりにアメノホヒは見事に国譲りで活躍したのだ!!と言い張っていること。

※ いや…オオクニヌシの部下として尽くしたから、オオクニヌシはアメノホヒの子孫には祟らないんだと思うよ?アメノホヒが本当に天孫降臨の功労者なのだとしたら、八咫鏡に祟られて宮中から追い出した雄略天皇みたいなことになってるはずだよ?

2.絶対に、熊野大社(出雲国一之宮)の優位性を認めないこと。

※ 表向きの建前はどうであれ、亀太夫神事はじめ、他の神事でも熊野大社は出雲大社よりも格上なのだけれども、色々理由を付けては対等もしくは出雲大社が上であると頑なに主張する、傍から見ていると変なプライドがある

3.というか、そもそも熊野大社の祭神が、スサノオ様であることを全否定している。熊野大社の祭神は、あくまでも《熊野の大神》であり、偉大なる出雲の農耕神(食の神)であり、『伊邪那伎日真名子(いざなぎのひまなこ) 加夫呂伎熊野大神(かぶろぎくまのおおかみ) 櫛御気野命(くしみけぬのみこと)』がスサノオ様と見なされているのは残念だとか言っていること。

※ おいおい…当の熊野大社が、『イザナギ神の日の愛し子・祖神で熊野の大神である神聖な食の神』(意訳)はスサノオ様である!とそれは誇らしくお祀りしているというのに、

外野が何を勝手な文句を付けとるんじゃ。

※ え!?スサノオってイザナギの愛し子なの?何で『日の』が付くの!?…という出雲国造神賀詞についての考察は、当ブログでは『スサノオがイザナギの日真名子かもしれない話』シリーズ(2020/03/07~)で、長々と連載致しましたので、興味のある方はどうぞ

…というわけで、amazonのレビューで書いている人が居ましたが、出雲大社自慢、出雲国造自慢が各所に見られます。

まあ、そのくらいの心意気でなければ、敗者の国・出雲の王を祀った神社の宮司は務まらないのかも知れませんね。

スサノオ様は、ふたつの王家と繋がっています。
ひとつは、スセリヒメやオオナムチに繋がる出雲王朝の血統。
もうひとつは、アマテラスとの誓約で生まれた男神の子から連なるヤマト王朝に続く系統。

天皇自らが素尊は皇国の祖とか言ったり津島神社に日本総社の号を贈る程度に、どちらにとっても祖神なので、スサノオ様はヤマト王朝には祟らないのでしょうけれども、出雲王朝と大和朝廷の関係は、紛うことなき敗者と勝者で、出雲大社はどんなに強がろうとも、敗者の悲劇の証です。

出雲大社がそれを隠しているのか、それとも心の底から《国を譲った》ことを誇りに思っているのか、それがわからないのですけれども。
私は、もうこのブログで何度言ったか判りませんが、

平和裡な国譲りなんてある訳無かろうが。ナガスネヒコが必死に抵抗したように、出雲もヤマト王朝が仕掛けた侵略戦争に抵抗したのに決まってる。

その辺りには目を瞑って頂ければ、超一流の資料だと推したいと思います。

どうぞ皆さん、読んでみて下さい。
2020. 04. 23  
この本はオススメです!

私のように、出雲贔屓過ぎてほかの地域の知識がお留守だったりする宗像初心者には、非常に良い入門書であるとイチオシしたいです。

研究本、考察本ではなく、帯にあるとおりに『沖ノ島と海人の国の物語』であり、編者が宗像市世界遺産登録推進室なだけあって、世界遺産として認められるにはどのように人々の理解を得るべきか、という視点で書かれており、その試みは成功していると言えましょう。

この本のとっつきやすい理由その1は、時代ごとに8話に分かれた短編漫画(番外編も入れれば9話)が、当時を生きた人々の息吹をリアルに伝えてくれる良作であるということです。
絵の好みは分かれるでしょうが、画力がありますし、画面も非常に見易く読み易く、ストーリーも面白い。

そして、巻末に20ページほどの文章で、こちらは少し専門的な解説が為されていて、こちらも興味深く読ませて頂きました。

私がこの本を読んでみる気になったのは、古代日本の海人族、海の民と呼ばれた人々の活躍を知りたかったからです。
出雲を含む山陰が広くそうであったことは勉強していましたが、宗像については無知でした。

というか、私は宗像というか、宗像三女神を避けたかったからです。

出雲大社にて、真ん中にオオクニヌシを挟んで、タギリヒメが嫡后スセリヒメ様を差し置いて、堂々上座に祀られているのが、許し難い!!

私にとっては確定情報ではないのですが、出雲大社はしめ縄の向きが逆であるのと同様に、左右の上座下座も逆になっている説があり、その説を取るとスセリヒメが下座となり、それを脇に置いても貝の女神が2柱、スセリヒメ様側の敷地内にお邪魔して一緒に祀られているという状況からして、あまり敬意を払われている気配ではないのは明白です。

だから、私はタギリヒメが大嫌いで、

妾の分際でなんという無礼!嗚呼誇り高きスセリヒメ様、おいたわしい…!!

と、スセリヒメ様付きの女官長の如くにワナワナする感じだったのです。

でも、こちらの本を読んで、私の中でタギリヒメの地位が上がったわけではないのですが、記紀を編集した頃のヤマトにとって、宗像が非常に重要な場所と技術と持っており、宗像の姫が天武天皇に嫁ぎ、第一皇子・高市皇子を生んだという事実は、かなり影響したであろうと納得出来たのです。

高市皇子は、天武帝が大海人皇子と呼ばれていた時代に、壬申の乱で軍事を全て委ねられた人物であり、持統帝の時代にあっては太政大臣としてその政権を支えた功労者でもあったのですから。

記紀が、そして出雲大社が、高市皇子の母方の祭神・宗像三女神を非常に重んじ、滅ぼされた敗者側の嫡后スセリヒメよりもはるかに丁重にお祀りするだけの理由は、確かにあったのです。

※ それでも嫡后はスセリヒメ様だけどな!!

私は、スサノオ様やスセリヒメ様は、実在の人物がモデルであろうと思っていますが、宗像三女神については違うと思っています。
今回紹介した本を読んで、一層そう思いました。

縄文~弥生にかけて、沖ノ島の辺りの地形がどうであったのか。
島になったのはいつなのか、私は不勉強にて知らないのですが、日本と半島の間には、縄文時代から縄文人の行き来があり、同じ文化と、同じ言語をともにした、同一文化圏がありました。

三柱の女神がいるという伝承が出来たのは少し時代が下ってからだと思いますが、それでも沖ノ島に対する海の民の信仰は、沖ノ島が海に現れた太古の昔からあったのだと思います。
ひょっとすると、縄文時代からの女神です。

もし、オオクニヌシの時代にタギリヒメなる人物が嫁いで来るなり、現地妻であったりしたのであれば、それは本名ではなく『宗像の姫』という意味の愛称・尊称であったのではないでしょうか。

私は、海の民の文化・古代での素晴らしい技術と活躍は、もっと注目されるべきだと思っています。
これからも、日本各地でこのような試みの本が出て来るといいなあと思います。
2020. 01. 13  
私は、ツクヨミという謎の月神について、まともに取り組まれた本は、以前同じ【本】カテゴリで紹介した、『ツクヨミ 秘された神』 (戸矢 学 著) くらいしか無い、と思っていました。

だって、検証するだけの材料が、あまりにも少ないからです。
まず、古事記ではスサノオがオオゲツヒメの食事が汚いと言って斬り殺すエピソードが、日本書紀ではスサノオではなくツクヨミになっていて、姉アマテラスが怒り、もう顔も見たくないと追い出す話になっている、そのくらいです。

壱岐の月の神が、タカミムスビ神の子だと名乗り、自分を祀れと言ったというお話も有るのですが、壱岐の月神信仰はツクヨミとは全く別と考えられ、今はその神社にツクヨミが祀られていますが、これも参考になりません。

この手札の少なさの中で、戸矢氏はかなり頑張って下さったと思います。
推論だらけという批判もありますが、巻末のツクヨミ関係の神社がズラッと並ぶ一覧や、1ページは埋まるほどの参考文献一覧を見ると、戸矢氏が限界を承知の上で、誰も書かなかった本に挑んだのだという地道な努力と誠実さを感じます。
戸矢氏が出した結論自体は、私にとっては「そういう可能性も無くはないな」という感じで、「これは尤もだ!私はこの論を信じるぞ!!」とまでは行かないまでも

『ユニークな面白い考察だから、読んでみるといいよ!』

というお勧め度です。

でも…でも、ですね。
戸矢氏の本しかないと思っていたのに、もう1冊ツクヨミ本・月読尊(中嶋榮二 著)なるものを見つけて、それが(以下amazonの商品説明を引用)

日本の創世神話に現れる三貴神(天照大神、月読尊、素箋鳴尊)だが、そのうちの一柱、月読尊に関する逸話はあまりに少ない。なぜかの神だけが存在が希薄なのか。素朴な疑問から始まった研究は、月読尊を祀る神社から対馬・壱岐の信仰、やがて日本国を越え、遠く西アジアの月神信仰までも網羅し、大胆な仮説へと導かれていく――。日本の古代史研究に一石を投じる一冊。

とか書いてあったら、2800円でも欲しいと思うじゃないですか!?
たとえ元値が600円の文庫本(絶版と思われる)で、ぼったくりだと思っても!!

中古を扱う中でも一番安かった2800円+送料で、私はこの本を取り寄せたのでした。
で、結論から言います。

9800円出して買う価値は全く無いです。
※ 今、amazonに残っているこの本の値段が9800円。これを買うと、あなたは私よりも7000円多く無駄遣いをすることになります

まず、ホツマツタヱ(秀真伝)ファンの皆様には予めごめんなさいと申しますが、私としてはホツマが出て来た時点でアウトです。

昔チラッと読んだ程度ですけど、ホツマが天照を男性、正妃を瀬織津姫としたのはポイント高いです。(私もその可能性は高いと思っている)
でも、中宮って何だよ……時代的にどうよ……

あと、サスラヲ(=スサノオ様)のことを、
流離男。曲り外れた男。
呼わばりしたことは絶対に許せない!

サスラヒメも同様に、流離姫。曲り外れた姫。モチコとハヤコを指す。とか、許し難い!
はあ?モチコ?ハヤコ?知らねえよ。

大体なあ、スサノオ様は、建速須佐之男命っていう呼び名もあって、その神威を表す美称『建』と『速』がダブルで付いている御方だぞ!

サスラヒメ様は、最強祝詞・大祓詞の祓戸大神の中で、佐須良比売と呼ばれているんだぞ!

……と、いうことで、ホツマの話は強制終了して、本題の『月読尊』の話をします。

まず…ですね。何て言えばいいんだろう…
文章が、非常に曖昧で、読んでいて困惑するんですよ。

どこかの文献から引っ張ってきた伝説なのか、著者の推理なのか、果ては妄想なのか、読んでてよくわからない箇所が結構あるんです。

こういう非論理的な文章からして、amazonの商品説明の
『日本の古代史研究に一石を投じる一冊』っていうのは、誇大広告を通り越して虚偽なんじゃないですか。

あと、タカミムスビを月神とか、天照国照彦天火明命=仄かな明かりの神→ 月神 とかですね、とにかく基礎知識が抜け落ちてるか、記紀の誤読感が満々なんですよ。

この本を読了出来る人って、凄いよ…偉いよ……
私、第1章の始めの辺りで、遠い目になって本を閉じたもん……

著者の名前でぐぐってみましたが、この本しか出てきません。
いや…これ1冊でも、出版してくれる出版社があったなんて、驚きだよ……

と思ったら、あの自費出版で悪名高い文○社(伏せる意味あるんだろうか)だったよ……

そういう訳で。
9800円で買わないことを忠告して、〆たいと思います。
2019. 12. 26  
三貴子のうちの一柱とされながら、不自然なほどに記録が少ないツクヨミ・ツキヨミ。

でも、影が薄いながらも、天皇に祟る程度には、アクティブな所もある神様なんですよね。

謎の多い神に惹かれがちな私も、詳しく知りたいと思う神です。
でも、スピ系でも新興宗教がらみでもなく、学術的なアプローチをしている本で、現在入手可能なのは、私が調べた限りではこの1冊のみです。

amazonの評価を見ると、見事に☆1~5まで散けています。

つまり、学術的にアプローチしようにも、手札があまりにも少なくて、著者の推理に寄る所がどうしても多くなってしまう。
だから、斬新で新鮮な切り口と思う人と、信用に値しないと思う人に分かれるのでしょう。

でも、学術的なアプローチをしているツクヨミ神の本がこれしかない程度に、戸矢氏は証拠の少なさというハンデと限界を承知の上で、敢えてツクヨミ神の謎に向き合ったのだと思います。

私は個人的には、☆4つくらいでしょうか。
内容的には、可能性はあると思うし面白い考察ではあるけれども、著者の推論に推論を重ねる箇所が多くなり、説得力に欠けます。
でも、戸矢氏の限界を承知した上での可能な限りの誠実な考察という態度に、敬意を表したいと思います。

この本は、月読命と天武帝の深い関わりについて考察しています。
もし、この推理が当たっているとすれば、妻の推古天皇が男神・アマテラスを女神に変えることくらい、やっちゃうよなーと思います。

三種の神器のうち、八尺瓊勾玉だけは宮中に置かれているとされているが、それは表向きであって、八尺瓊勾玉もまた、宮中にあるのはレプリカであろうという考察は、面白い。
勾玉の主要な産地は何処であるか?ということを考えると、天皇家は勾玉という神宝の正当な後継者ではない、可能性は確かに高い。

八尺瓊勾玉が元々はどこの神宝であったか?という著者の推理が当たっていれば、勾玉もまた天皇家に祟るのに決まっていますから。

個人的には、一度読んでみては?と思う本です。
プロフィール

chikaru414

Author:chikaru414
日本の神話と神社仏閣、それにまつわる歴史が好きです。
スサノオ様、スセリヒメ様はじめ出雲の神様と水神様推し。
定義山西方寺を崇敬。伊達政宗公を尊敬する伊達家家臣末裔です。透明水彩絵師。

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