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2020. 07. 04  
日本書紀は、スサノオ様とクシナダヒメ様の間には、オオナムチが生まれたとしているので、普通にそのまま王になれます。
が。古事記にて、オオナムチと結婚することで、オオナムチを王にしたという出雲の末子、

キーパーソーン・スセリヒメは、存在そのものを葬り去られている。

そして、古事記の方もかなりの割合を出雲神話に割いているのに、スサノオ様の神裔に、継承者たる末子にしてオオナムチの嫡后スセリヒメの名が出て来ないという奇妙さ。

スセリヒメは、十種神宝のうちの2つ、蛇比礼(おろちのひれ)と蜂の比礼(はちのひれ)を持っていて、それを使ってオオナムチの命を救ったというのに?

そして、傍系の遠縁とは言え、出雲の正当な後継者・スセリヒメの婿=跡継ぎに決まったら、オオクニヌシ・別名千矛(ヤチホコ)に突然バージョンアップするんだけど、本当に『八』に相応しいのはスセリヒメなんじゃないか?
スサノオ様の正妻・クシナダヒメも、人姉妹の末娘という、『八』が語られ、末娘という継承者の条件を満たしているのだから。

スサノオ様の愛娘にして、出雲の正当な継承者・スセリヒメにも、『八』が付いてるんじゃないか?
そして、実際にそうなんじゃないか?

そこで、私が思い出したのは、

2020/01/26 から連載した、『事代主と建御名方の母神は誰?』シリーズ・その1~その6 の記事です。

古事記が語るオオクニヌシの神裔によると、コトシロヌシの母神は、

神屋楯比売神(かむやたてひめのかみ)という、かなり凄い名前です。

どこが凄いかというと、敬称を取っ払って書き記してみると解ります。

屋楯比売。これだけです。
もう少しリスペクトすると、屋楯比売(やたてひめのみこと)、です。

古事記は、結構尊称が大雑把で当てにならないことも多いのですが、系図にわざわざ

屋楯比売、文字通り神威の著しいことを示す敬称を、2つも付けたのには、意味があるはずです。

オオクニヌシの神裔で、最も高貴なる妃神の名前、それが神屋楯比売神であるのならば、それはスセリヒメであると判断するのが妥当です。

そうすると、スセリヒメもまた、『八の姫神』であることが、判明するのです。
上記の『事代主と建御名方の母神は誰?』シリーズを書いていた時には、気が付きませんでした。
こんな形で、スセリヒメの『八』が隠されていただなんて。

神屋楯比売神、は重垣に守られたクシナダヒメのように、堅固な城に守られている姫神に相応しい名前だけれども、きっともうひとつの意味が隠されている。

だって、ヤタテヒメ、はこうも書けるから。

楯比売神。

スサノオ様の愛娘にして、十種神宝を受け継いだほどの、日本書紀が抹消したほどの、出雲の女王に匹敵する女神の名になんと相応しいことでしょう。

弥生中期の田和山遺跡(島根県)は、大社造風建物の周りに堅固な防御構造が見られ、武器が集められていて、土塁や壕をめぐらしてある。
という、 ほぼ状態。

スサノオ様がクシナダヒメの為に設けた八重垣とは、このような城だったのではないか。そして、

同じ『八』を冠して、オオナムチが矛なら、スセリヒメ様は楯という、見事な一対。

矛盾、などという言葉があるとおりに、矛と楯には繋がりがあります。
矛は片手で使う武器であり、もうひとつの手には楯を持って戦うのですから。

日本書紀がスセリヒメの存在を打ち消そうと、出雲大社がどれほどタギリヒメをヨイショして特別扱いで祀ろうと、オオクニヌシの嫡后はスセリヒメであり、この二柱の夫婦神の絆は、決して切れはしないのです。

スセリヒメ様、どうか、貴女の御魂が、いつまでも愛する夫神と共に、幸せにありますように。
2020. 07. 03  
再び場面はヤマタノオロチ退治。
スサノオ様はクシナダヒメを神聖な爪形の櫛に変えて(突然魔法使いになるスサノオ様)みづらに差して、アシナヅチ・テナヅチに言うには、

『あなた方は塩折の酒(やしほをりのさけ)を造り、また垣を作り廻らし、その垣につの門を作り、門ごとにつの佐受岐(さずき)を作り、その佐受岐ごとに酒桶を置き、その酒桶ごとにその塩折の酒を満たして待ちなさい』

八だらけです。

そしてやってきたヤマタノオロチ。
その目は赤かがち(ホオズキ)のようで、身一つにつの頭・つの尾があります。また、その身には蘿(こけ)や檜や杉が生え、その長さはつの谷・つの峰にわたります。その腹を見れば、ことごとく常に血がにじんで爛れています。

……いつも血が滲んでただれてるのか……何でだろう?痛そうだなぁ、可哀想だなぁ…と思っちゃったの私だけですか。
だって、こんなかんじだよ?ちょっとかわいくない?※ 日本神話・神社まとめサイト様の用語・神名など>『ヤマタノオロチ』の挿絵

でも、退治しないと日本初の大和撫子クシナダヒメはスサノオ様の日本で一番可憐な花嫁さんになれません。
せめてお酒をいっぱい飲んで頂いて、気持ち良く眠って麻酔状態みたいな感じになって頂いて、痛みも苦しみもないまま、慈悲深いスサノオ様はヤマタノオロチの解体作業を始めました。

そうしたら、スサノオ様の愛剣が欠けるほどの、硬い見事な太刀が!
天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)です。

古事記でも日本書紀本文でも《くさなぎのつるぎ》なのに、日本書紀の異伝に出てくる《天叢雲剣》の名が、何故か現在の三種の神器でも正式名称になっている謎。

ひょっとして、草薙剣(くさなぎのつるぎ)と天叢雲剣って、別物だったりするんですか?

※ いくら相手がヤマトタケル様でも、のちの世で三種の神器になるほどの御神体を貸し出すとは異な事かと存じますが如何

その後、スサノオ様は、すがすがしい須賀の宮で、ハニーと安住の地を得た喜びに、すがすがしく日本初の和歌を詠うのです。
暴れん坊主のようで、案外雅なスサノオ様、お素敵にございます。

雲立つ 出雲重垣 妻ごみに
 重垣作る その重垣を』


〆まで八だらけの歌とは流石です。

古事記でのスサノオ様の物語は、ここで幕を閉じます。
まるでエンドロールのように記される、スサノオ様の神裔

そこで、そのクシナダヒメと夫婦の交わりをして生んだ神の名は、島士奴美(ヤシマジヌミ)神と言う。
 また、オホヤマツミ神の娘、名は神大市比売(カムオホイチヒメ)を妻として生んだ子は、大年(オホトシ)神、次に宇迦の御魂(ウカノミタマ)。二柱。

 この兄のヤシマジヌミ神が、オホヤマツミ神の娘、名は木の花知流比売(コノハナチルヒメ)を妻として生んだ子は、布波能母遅久奴須奴(フハノモヂクヌスヌ)神。
 この神が、オカミ神の娘、名は日河比売(ヒカワヒメ)を妻として生ん(ここからめっちゃ長いので省略)…生んだ子は、大国主(オホクニヌシ)神である。またの名は大穴牟遅(オホナムヂ)神と言い、またの名は葦原色許男(アシハラシコヲ)神と言い、またの名は千矛(ヤチホコ)神と言い、またの名は宇都志国玉(うつしくにたま)の神と言い、合わせて五つの名があります。

~完~

……いや、ちょっと待て。

スサノオ様の神裔に、最も重要な姫・スセリヒメの名が無いのは、何故だ?

(つづく)
2020. 07. 02  
日本の神話には、しばしば『八』という数字が登場します。
出雲やスサノオに絡む場面になると、一層『八』だらけになるので、スサノオを表す数字は『八』と言われるのだと思います。

そして、『二』と『八』は、日本の聖数です。
極まった数(それ以上は『たくさん』)、であるからです。

私が語るよりも、こちらのページが詳しいので興味のある方はどうぞ。

スサノオがらみの『八』は、

まずは父イザナギから勘当されて(?)、暇乞いにアマテラスを訪れた所、コイツ高天原を乗っ取るつもりだな!と疑われたと言うよりはほぼ決めつけられてしまったので、『誓約/うけい』という謎の占いみたいなことをして生まれてきたのが、

女神3柱+男神5柱=8

その後色々やらかして、高天原を追放されてから降った出雲では、
幼い女の子(日本書紀は『少女』古事記は『童女』)を真ん中にして老夫婦が泣いていたのでした。

聞いてみれば、老夫婦には人の娘がいたのだけれども、毎年越の国から俣遠呂智(古事記表記/やまたのおろち。実は蛇かどうかよくわからない謎の怪物)が来て食ってしまう。この末娘が最後だとのこと。

スサノオ様がヤマタノオロチの形を問えば、(やまたのおろち?なんじゃそりゃ、とスサノオ様も思ったんでしょう)。
「その目は赤かがち(ホオズキ)のようで、身一つにつの頭・つの尾があります。また、その身には蘿(こけ)や檜や杉が生え、その長さはつの谷・つの峰にわたります。その腹を見れば、ことごとく常に血がにじんで爛れています」

ヤマタノオロチも『八』が大好きな模様です。

『俺の嫁にくれ』

と、突然にそのいたいけな童女を所望するスサノオ様。
常識的に、貴方様のお名前も存じませんで……と、どん引く老夫婦に、

『俺は天照の弟だ。』(どーん)
『畏れ多い!是非差し上げます!!』


姉を引きこもりにして盛大におしおきを食らったばかりなのに、堂々と名乗るスサノオ様。
そして、天孫降臨前なのに、何故かアマテラスと聞いてひれ伏さんばかりのアシナヅチ&テナヅチの謎。

それは脇に置いて、その後スサノオ様が、クシナダヒメだけではなく、両親のアシナヅチ・テナヅチも面倒を見てくれて、役職をくれた上にクシナダヒメとも一緒に暮らせるようにしてくれたことを考えると、

私は、スサノオ様の慈愛だったと信じます!
勿論、クシナダヒメが成長するまでお手々を出すのは待ったはずです!!


(つづく)
2020. 06. 30  
今回で、このシリーズも23回を数えました。
終盤にやっと、スセリヒメの名の意味としてある可能性を、幾つも挙げることが出来ました。

でも、私には、このうちのどれかひとつ、と断言するだけの知識を持ちません。
ここから先のスセリヒメの謎は、このシリーズを今まで読んで下さった方々の想像にお任せしたいと思います。

そして、最後にひとつだけ、スサノオ様の御名前について。

日本書紀は、スサノ/スサノの表記として、『素戔をチョイスしているんですけど、

『素戔という誤字で検索すると、約 46,700 件もヒットするんですよね。

まあ、『嗚』自体が啼き声とか悲しみ泣くという意味ですから、形が似ていてメジャーな『鳴』とごっちゃにするのは判らないでもないのですが、

『鳴』は 呉音 : ミョウ 漢音 : メイ

ですので、音としては オ・ヲ とは程遠いです。

でも、私は日本書紀の著者達は、その誤字のしやすさを狙っていたと思うんですよね。
『嗚』に『啼き声』『泣く』という意味があり、更に『鳴/な-く』という似た字と誤り、ウッカリすると

『スサナキ』と読めてしまうマジック。

読めてしまう、だけです。
実際の呼び名は、通説通りスサノオ・スサノヲ・スサノウ、辺りでいいのです。ただ、そう読めてしまう字を、わざわざ日本書紀の著者達がチョイスした=物語とは別の形で伝えようとした事に意味がある。

イザナギ神は、イザナと清音で読む説もあります。
というか、どちらが正しいのかわかっていません。

それに、清音だろうと濁音だろうと、翁(おきな)の『キ』が男性、嫗(おみな)の『ミ』が女性を表していて、イザナミ神が女神であるように、イザナギという名が男神であることを表しているのは変わりません。
比売(ヒメ)でも毘売(ビメ)でも同じであるようにです。

一応、ここではわかりやすく、お揃いっぽいイザナキ、という清音にしておきましょうか。

《スサナキ》とウッカリ読んでしまいそうなスサノオ様は、確かに《イザナキ》様から海を継承した日真名子である。

…ということを、日本書紀の著者達は、知っていたのだと思います。

これにて、23話に及んだ長い長い藤語りを、終えたいと思います。
此処までお付き合い下さった読者の皆様に、心よりの感謝を。
2020. 06. 29  
※  注:昨日の記事の終わりの方の部分に、修正を加えました
※ スセリヒメの本来の発音の候補は、『朱砂/すさ』『朱/す』『朱・赭/そほ』+『振り/ふり』で、ス(ソ)フリヒメ/カッコ内省略か。


そして、十種神宝で、『ふる』と言えば、ひふみ祝詞の名で知られる、布瑠の言(ふるのこと)です。
布留の言については、wikiを抜粋して引用します。

>「一二三四五六七八九十、布留部 由良由良止 布留部(ひと ふた み よ いつ む なな や ここの たり、ふるべ ゆらゆらと ふるべ)」と唱える「ひふみの祓詞」や十種神宝の名前を唱えながらこれらの品々を振り動かせば、死人さえ生き返るほどの呪力を発揮するという。

>「ふるべ」は瑞宝を振り動かすこと。
>「ゆらゆら」は玉の鳴り響く音を表す。


>石上神宮の祭神である布留御魂神は十種神宝のことであるとする説もある。
>石上神宮に伝わる鎮魂法では「ひふみの祓詞」や十種神宝の名前を唱える。
>いずれにしても、(石上神宮には)十種神宝は現存していない。


(引用終了。太字と『石上神宮には』の補注は私)

また、石上神宮には残されていますが、各地の神社に十種神宝のうちの一部と呼ばれるものが散り散りに存在していますが、本当の神宝かは不明です。

石上神宮の祭神も、石上神宮のwikiから引用します。

主祭神
 布都御魂大神(ふつのみたまのおおかみ) - 神体の布都御魂剣(ふつのみたまのつるぎ)に宿る神霊。

配神
 布留御魂大神(ふるのみたまのおおかみ) - 十種神宝に宿る神霊。
 布都斯魂大神(ふつしみたまのおおかみ) - 天羽々斬剣(あめのはばきりのつるぎ)に宿る神霊。
(以下略)

この祭神名に含まれる、『フツ』、『フル』、『フツシ』については諸説有りですが、スサノオやニギハヤヒの本名だ説は、結構人気である模様です。
尤も私は、『フツ』、『フル』、『フツシ』がモンゴル名というのには、全く同意しませんが。


まず、モンゴル人(騎馬民族)は古代日本に来ていません。
騎馬民族が古代日本の海人と海戦を繰り広げたところで、勝てるわけもありません。
遺伝子的にも日本人とモンゴル人は大きく異なりますし、日本に家畜用の牛馬が輸入されてくるのは5,6世紀辺りです。

つまり、『フツ』、『フル』、『フツシ』には、モンゴルとは全く関係なく、神や神宝に関する何らかの、しかもかなり重大な意味がある、ということです。

『フツ』は剣で断ち切る音であるという説をよく見かけます。
『フツシ』は私はよくわかりませんが、『フル』が特別な名だと言うことはわかります。何しろ、

『布留部 由良由良止 布留部/ふるべ ゆらゆらと ふるべ』とあるように、神宝を振れば死者も蘇るほどの呪力がある、とひふみ祝詞は言っているのです。

それほどに『布留』→『振る/ふる』は特別な動作であり、もし、

出雲の後継者の証として、神宝の比礼を持つ姫の真名が、スサとヒメを取り去った『フリ』だったなら…?

大和朝廷は、十種神宝を持っていたニギハヤヒの出自を誤魔化さねばならず、国史に出雲のスセリヒメの名を残すわけにはいかなかったことでしょう。

(つづく)
プロフィール

chikaru414

Author:chikaru414
日本の神話と神社仏閣、それにまつわる歴史が好きです。
スサノオ様、スセリヒメ様はじめ出雲の神様と水神様推し。
定義山西方寺を崇敬。伊達政宗公を尊敬する伊達家家臣末裔です。透明水彩絵師。

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